DAY5:【リサーチ編】VoC(顧客の声)を分析しよう~AI実践道場~
VoC(顧客の声)をリサーチしよう!
AIを使って顧客分析を行なったあなた。
「AIを使えば簡単🎵」
と思ったものの、「ここには生の顧客がいない!」と上司に指摘されてしまいました。
一体これはどういうことなのでしょうか…?
そんな時、途方にくれるあなたのもとへ先輩がやってきました。
AIを使って立派なペルソナとカスタマー・ジャーニーを作ったけど、何がダメだったんだろう…?
典型的なAIの落とし穴にハマってるね。
生成AIはそれっぽいものを出してくれるけど、だからこそちゃんと使うタイミングと目的を考えなければいけないんだ。
「見栄えの良いものができたからAIを上手く使えている」とつい勘違いしてしまいがちだけど、「で、それは何の役に立つんだっけ?」となったら本末転倒になってしまうよ。
うう、耳が痛い…。
今回は何がいけなかったんでしょうか?
顧客情報をインプットせずにペルソナとカスタマー・ジャーニーを一発出ししてしまったところだね。
そもそも、ペルソナやカスタマー・ジャーニーは何のために作ると思う?
えーっと、顧客理解を深めるためですか?
うん。それも一つの目的だね。
でも、それと同時にコミュニケーションのためでもあるんだ。
既存事業の場合、「私たちのお客さんはこういう人ですよね?」の確認。
新規事業の場合、「この事業ではこういうお客さんを想定しています」を確認するなど、チーム内での前提共有をするのに使われるんだよ。
新規事業を企画するときや、詳しくない業界について調べる時は昨日のやり方でもいいよ。
議論の叩き台になるし、ある程度は掴めるからね。
でも、今回は部長に「メルマガやブログ記事を書くための前準備」と言われていたよね。
そうなったら生のお客さんの声をちゃんと見なきゃいけないんだ。
今日はお客さんの声から顧客理解を深める方法を学んでいこう!
よーし、今度こそ頑張ります!
顧客の声はVoC(Voice Of Customer)と呼ばれます。
VoCはプロダクトの開発においても、マーケティングコンテンツの作成においても非常に重要です。
実際の顧客の声を聞かないで「こういうことを思っているに違いない」と思い込んでしまうと、市場の実態と乖離してしまう恐れがあります。
最近はペルソナやカスタマー・ジャーニーを一発出しできるAIもありますが、だからこそ「AIが先、業務が後」にならないように気をつけましょう。
また、VoCは意外なニーズを発見するヒントにもなります。
例えば、カルビーが開発した「ふるシャカ」という商品があります。
これはインタビューやデータ分析など、徹底的なVoC分析の結果生まれたものです。
これはサイコロ上のポテトスナックに味付けパウダーを入れてシャカシャカ振って混ぜるお菓子で、そのときに出る音で応援するという商品です。
第1弾商品の「ふるシャカ」は、サイコロ状のポテトスナックに味付けパウダーを入れてシャカシャカ振って混ぜるお菓子なんですけど、そのときに出る音で応援するという商品です。音って、食においては基本的にネガティブな要素なんです。それを応援という、する側もされる側も嬉しいポジティブな行動に使えるようにしたアイテムです。これも発想を広げて、インタビューやデータ分析の結果からたどり着いた一つの形です。
MarkeZin「カルビーが挑む圧倒的な顧客志向の新商品開発 ヴァリューズと実践した潜在的ニーズを発掘するデータ活用」より引用
AIでペルソナやカスタマー・ジャーニーを作れるツールが増えていますが、AIの生成した人格を過信せず、こうした生の声を収集・分析することがとても大事です。
アンケートを分析しよう
実際のアンケートを分析してみよう!
今回の課題では、まず架空のアンケート結果を作成してから、それを元に分析します。
もちろんこのアンケート結果は架空のものであるため、リアルな顧客の理解には役立ちません。
実際の業務では本物のアンケートを使う前提で、あくまで練習のために架空のデータを生み出している点にはご注意ください。
課題1:自分の設定商品について、プロンプト1⇨プロンプト2の順番で実行してください。(ChatGPT/Claude)
プロンプト1「以下の商品について、以下の質問項目に回答する架空のアンケート結果を5件作ってください。
##商品情報
##質問項目
1.基本情報
・年齢
・性別
・職業
・製品を使用する頻度
2.この製品を何で知りましたか?(インターネット、友人・家族の推薦、広告など)
3.この製品を選んだ主な理由は何ですか?
4.この製品の機能はあなたの期待に応えましたか?(5段階評価)
5.この製品は使いやすいですか?(5段階評価)
6.この製品の価格に対する満足度を教えてください。(5段階評価)
7.価格と品質のバランスについてどう思いますか?(5段階評価)
8.この製品について改善してほしい点はありますか?」
プロンプト2「これらのアンケート結果について、グラフに整理してください。また、ここから今後のマーケティング活動に役立つ洞察と、洞察に基づくアクション案を出してください。」
ここでのポイントは、アンケート結果から洞察とアクション案まで導いていることです。
データを見るときは、「ふむふむ、なるほど」と終わるのではなく、事実と解釈を分けた上で、具体的なアクションにまで結びつけることが大切です。
こうした考え方は、雲・雨・傘というロジカルシンキングのフレームワークで表されることがあります。
- 雲:事実把握のフェーズ。「空に雲がかかっているなぁ」
- 雨:推論・解釈のフェーズ。「ということは、雨が降るかもしれないな」
- 傘:判断・提案のフェーズ。「なら傘を持って出かけよう!」
「こんなアンケート結果でした!」と伝えるだけでは、「それで?」と上司にツッコまれてしまいます。
「事実はわかったから、それはどう解釈できて、その結果どんなアクションをすべきだとあなたは思うの?」という質問に回答できて初めて、データ分析は価値を持つのです。
今回は課題のため5件と少ない分量ですが、大量のデータを読み込ませることでより統計的に確からしい示唆を出せます。
分量が大きい場合、ツールやバージョンによってはチャットからは読み込めないことがあります。
その場合はデータを一つのテキストファイルにまとめるなどして、そのファイルを読み込ませるようにしましょう。
また、GPT4oやClaude3.5ではアンケート結果をグラフに描画することも可能です。
デザイン性を求める場合はExcelをはじめとした専用ツールの方が優れていますが、社内用資料としては使えるでしょう。
アンケートデータを元にペルソナとカスタマー・ジャーニーを作成しよう
今度はこのデータを元にペルソナとカスタマー・ジャーニーを作り直してみよう!
さて、DAY4のリベンジです!
DAY4ではデータを与えずに作成させましたが、今度はデータをインプットした上で作成させます。
課題2:課題1を行なったものと同じチャットで、以下プロンプトを実行してください。(ChatGPT/Claude)
「あなたは熟練したマーケティングコンサルタントです。上記のアンケートを基に、この商品の理想的な顧客のペルソナを作成してください。各項目について具体的で詳細な情報を提供し、一貫性のある現実的なペルソナを描写してください。
以下の項目に沿ってペルソナを作成してください:
基本情報: 名前、年齢、性別、職業、居住地、家族構成
人口統計学的特徴: 収入、学歴、社会経済的地位
サイコグラフィック特性: 価値観、ライフスタイル、趣味・興味、パーソナリティ特性
行動パターン: 購買習慣、メディア消費習慣、意思決定プロセス(特に上記商品に関連する行動に焦点を当てて)
目標と課題: 短期的・長期的な目標、日常的な課題や悩み、ペインポイント(特に上記商品が解決できる課題に注目)
ニーズと動機: 上記商品に対する具体的なニーズ、購買や使用の動機
ブランドとの関係: 上記商品ブランドの認知度、ロイヤルティ、過去の購買経験や類似製品の使用経験
情報源: 主な情報収集チャネル、影響を受ける情報源や人物(特に上記商品カテゴリーに関連するもの)
テクノロジー利用: デバイス使用状況、ソーシャルメディア利用状況、オンライン行動パターン(特に上記商品の購買や使用に関連するもの)
具体的なシナリオ: 典型的な1日の流れと、上記商品の利用シーン
引用や発言: このペルソナの特徴を表し、上記商品に関連する3つの典型的な発言
最後に、このペルソナの全体的な特徴と、なぜこの人物が上記商品の理想的な顧客であるかを150字程度で簡潔にまとめてください。」
課題3:課題1・2のプロンプトを実行したのと同じチャットで、以下のプロンプトを実行してください。(ChatGPT/Claude)
「このペルソナについて、カスタマー・ジャーニーを作成してください。」
どうでしょうか?
DAY4で出てきたものとは少し違ったのではないでしょうか。
ここでDAY1でお見せしたIPOフレームワークの図を思い出してみましょう。
「適切なデータソースを取得し、AIに提供する」ことは生成物のクオリティに直結します。
プロンプトテクニックも大事ですが、それには限界があります。
適切なデータを渡してこそ、AIはその真価を発揮できるようになります。
これは裏を返せば、AI活用とデータ収集は切っても切り離せない関係ということです。
どんなデータをどう取得すれば、ビジネスに役立つのか。
それには様々なパターンがありますが、そのノウハウの一つをお見せします。
顧客インタビュー動画からVoC分析しよう
さっきまでは複数人から取得した定量的なアンケート結果を元に分析したね。
今度は一人に深ぼって聞いた定性的なインタビューを分析しよう!
VoCは何もアンケートだけには限りません。
顧客に直接詳しく話を聞くインタビューも重要なVoCです。一対一で個人の意見や態度、その背景に迫るインタビューはデプスインタビューと呼ばれ、プロダクト開発の場で使われています。
実際に、(株)デイトラでも定期的なアンケートに加え、顧客への直接のインタビューの場を設けてその結果をカリキュラム・サービス改善に活かしています。
しかし、本格的なデプスインタビューを行なっている企業はそう多くないかと思います。
そこで、お客様の声やユーザーインタビューを元にVoC分析を行う方法を解説します。
その準備として、YouTubeを一瞬で文字起こししてくれる”Glasp”というアドオンを入れましょう。
これはブラウザに機能追加するツールで、YouTube動画を一瞬で文字起こしできるようになります。
無料で使えて便利なツールですが、もし他に使い慣れているツールがあればそれでも構いません。
導入すると、右下の赤枠のように動画の文字起こしを行えるようになります。
さて、ここからはインタビュー動画からVoC分析を行います。
課題4:まず、Glaspで顧客インタビュー動画の文字起こしを出力してください。好きな動画で構いませんが、見つからないという人は「デイトラデザインch」から選んでください。その後、以下のプロンプトを実行してください。もしも文字起こしの分量がチャットの上限をオーバーする場合、文字起こししたものを.txtファイルに保存し、それをチャットへアップロードして実行してください。(ChatGPT/Claude/Gemini)
「以下は、ある商品への顧客インタビューを文字起こししたものです。これについて以下項目について整理・分析してください。
##商品概要
(どんな商品か簡単に記述)
#項目
・顧客の基本情報
・商品を購入する前の悩み
・商品を知ったきっかけ
・商品の購入を決めた理由
・商品を購入後、どうなったか
・このインタビューから考えられる、この商品へのニーズがありそなターゲット像
・このインタビューから考えられる、今後のマーケティング活動に役立つ示唆
##文字起こし
(文字起こしを貼り付け)」
もしかしたらこれが今までで一番インパクトあるかもしれませんね。
「ここまでできるんだ…」
と恐ろしくなった人もいると思います。
この手法はVoC分析以外にも応用できます。
その一つが、コンテンツの横展開です。
動画コンテンツをテキストコンテンツへと容易に転換できるようになれば、コンテンツマーケティング施策が加速します。
ブログ記事、Instagram、X、ウェビナー資料等々…。
ユーザーがさまざまな媒体を使うようになった今、原液となるコンテンツを複数に展開していくマーケティング施策は一般的になりつつあります。
そうしたニーズを捉えるためにも、今回の動画⇨テキストのような形式変換の手法を覚えておきましょう。
よーし、部長に再チャレンジしてきます!
……(部長の元へ駆けていくあなた)
おお!今度はちゃんと顧客の声を見ているな。
そう。お客様の生の声を無視したペルソナには血が通わねえんだよ。
よくやったな!
やった!ありがとうございます!
まとめ
リベンジ成功!
今度は無事に褒められて終わりましたね。
生成AIはなんでも出してくれるからこそ、それを過信しないことが大切です。
「AIに読み込ませるべきインプットは何か?」を考え、そのデータ収集・取り込みまでを行えるようになると生成AI 活用レベルは一気に三段階くらい上がります。
ぜひ身につけましょう!
明日はメルマガ作成に挑戦します。
いよいよコンテンツ作成ですね。
次回もお楽しみに!
今回の課題にチャレンジする方は、ぜひXで #AI実践道場 のハッシュタグで投稿してください!
イベント感覚で取り組むことで、モチベーションが上がり仲間もできます。
AI実践道場の最新情報は初芝賢(@hatushiba_ken)にて発信しています。
みなさんの投稿、楽しみに待っています