DAY7:【プレスリリース編】さまざまな切り口でプレスリリースを作成しよう~AI実践道場~
プレスリリースを作ろう!
顧客向けのメルマガを作成したあなた。
「新人ながらAIを使いこなしている」という噂が広まったことで、新たな仕事が飛び込んできました。
新製品が明日リリースなんだが、お前に「プレスリリースを書いてほしい」という声が商品開発部から上がってきた。
明日の朝に配信するから、今日中にプレスリリース作成をよろしくな!
はい〜!(プレスリリース?何それ??)
プレスリリースは企業や団体が自社の情報を報道機関に向けて発表する文書です。
新製品やサービスの発表、イベント告知、企業提携の発表、研究成果の報告など、さまざまな場面で企業はプレスリリース配信します。
プレスリリースには主に以下の種類があります:
- 企業活動関連:新製品・サービス発表、イベント告知、施設・店舗オープン、研究成果・技術開発
- 経営・財務関連:業績発表、企業提携・M&A、組織変更、企業方針・ビジョン
- 人事関連:役員人事、重要な人事異動、新規採用情報
- 社会貢献・CSR関連:社会貢献活動、環境への取り組み、地域貢献活動
- 危機管理関連:事故・災害対応、製品リコール、不祥事への対応、謝罪声明
プレスリリースは、自社を知らない人やマスコミに対してアピールする場となります。
ユニークな活動を行っている場合はそれが取材に繋がったり、新製品リリースが顧客からの問い合わせに繋がったりすることがあります。
今はPR TIMESをはじめとしたニュース配信スタンドが充実しているため、ベンチャー企業であっても簡単・安価にプレスリリースを配信できます。
しかし、中・小規模の企業だと専任の広報がいないことも珍しくありません。
社内で誰かが兼務している、その都度担当者が配信するということがよくあります。
今回のように、「本当はプレスリリース出したいけど、担当者がいないからそのままになってた」というケースに遭遇したことがある人もいるのではないでしょうか。
今日はそんなシチュエーションを想定し、プレスリリースの作成を行います。
シンプルなプレスリリースを作成しよう
まずはプロンプトを使って作ってみよう!
あらかじめフォーマット、表現ルールを決めておくことで簡単にプレスリリースを作成できます。
まずはシンプルなプレスリリースを作ってみましょう。
課題1:設定企業の新製品情報を生成後、以下のプロンプトにその情報を追記して実行してください。(ChatGPT/Claude/Gemini)※Claude推奨
「あなたはプロの広報です。新サービスのプレスリリースを作成します。以下の製品/サービスについて、以下のフォーマットに則ってプレスリリースを作成してください。
##製品/サービス
製品/サービス名:
概要:
リリース日:
ターゲット:
ターゲットの得られるベネフィット:
製品/サービスの問題意識:
新奇性:
##フォーマット
◯タイトル
(プレスリリースタイトル)〜(サブタイトル)〜
◯️要約
300~500字程度の要約
◯️サービスの概要
サービスの概要を説明する文章
◯️リリースの背景
以下を明らかにしながらリリースの背景を説明する文章
・なぜ今なのか
・なぜこの会社がするのか
・誰のどんな役に立つのか
・どんな社会的意義があるか
◯️開発責任者のコメント
この商品/サービスへの想いと、将来への展望を語るコメント
◯会社情報
「提供会社」の情報をそのまま掲載すること。
##執筆時の注意点
・一文は50字以内にすること
・タイトルは伝えたいことを明確にすること
・情報を5W1Hで整理して正確に書くこと
・本文は結論から先に書くこと
・専門用語は極力少なくするか、補足を加えること」
実は、これは(株)デイトラが実際に業務で使っているプロンプトとほぼ同じです。
シンプルなプロンプトながら、実務に耐えるクオリティのプレスリリースが作成可能になっています。なお、ツールはClaudeを使用しています。
さすがに開発責任者のコメントだけは修正しますが、それでも10分ほどで作成可能です。
これまで1~2時間かかっていたのが10分程度になったため、およそ80~90%の工数削減につながっています。
今回お見せしたフォーマットは一つの例です。
自社にあったフォーマットを見つけて作成すると、社内でもとても喜ばれるでしょう。
ちなみに、今回は初めてChatGPT/Claude/Geminiの中からClaude推奨と明記しています。
実は2024年7月現在、自然な文章を作成するという点においてClaude3.5 SonnetやClaude3 Opusが秀でているからです。ChatGPTは固く不自然な語彙になったり、Geminiだと箇条書きでまともな文章にならなかったりします。(GPTはだいぶ良くなりましたが)
そのため、DAY6のメルマガ作成の課題もClaudeを使うと一番自然な文章ができる可能性が高いです。
ではなぜそれを明記してこなかったかと言うと、自分で「ん?」と違和感に気づく方が記憶に残るからです。
DAY1でもそれぞれのAIの違いを言語化してもらったように、この講座では「生成AIの使用を自分の実感に落とし込むこと」を大切にしています。
はじめから「Claudeは文章が得意なので、Claudeを使いましょう」と教えられると、先入観が強くなってしまいます。そうなると日々進歩するAIの変化にも自分で気づけなくなってしまいます。
もしDAY6で「あれ、これGeminiで出すと微妙かも…。Claude試してみようかな」などとやってみた方がいたら、大正解の学び方をしています。これからもその実感と検証の姿勢を大切にしてください。
もし「Claude以外使ってたけど、それなりのできてたから満足しちゃってた!」「Claudeで出したけど、そう言われたら他のも気になる!」という方は戻って確かめてください。あまりクオリティに差異が見られない可能性もありますが、それはそれで知見として溜まっていきます。
寄り道も楽しみながら学習を進めていきましょう!
リリースを魅力的する切り口のアイデアを出そう
基本的なプレスリリースはできたね。
そうしたらメディア受けしやすい切り口がないか探してみよう!!
先ほどのは基本的なプレスリリースです。
もしメディアに取り上げられたい、話題性を出したいというのなら、独自性のあるキャッチーな切り口が必要になります。
そこで、次は魅力的なリリースとするためのアイデアを探りにいきます。
課題2:課題1を行なったものと同じチャットで、以下のプロンプトを1⇨2の順で実行してください。(ChatGPT/Claude/Gemini)※Claude推奨
プロンプト1「あなたはプロの広報です。メディアに取り上げられやすい、反響のあるプレスリリースを作るための切り口を教えてください。」
プロンプト2「先ほどのプレスリリースをもっと魅力的にするために、それらの切り口を使った新しい切り口を考えてください。」
課題3:出てきた切り口の中から一つ選び、以下のプロンプトを実行してください。
「(番号)のプレスリリースを作成してください。」
切り口をAIに考えさせ、それに基づいて元のリリースの新しいアイデアを出させています。
言わば、AIに料理の仕方を考えさせ、自分が作ったものを料理しなおさせる、というイメージです。
これもDAY6で行った、広げる⇨絞るの発想に近いですね。
やってみればわかりますが、これで出させた新しいアイデアには使えないものも多く含まれます。
AIが「感動的なストーリー」「大胆な挑戦」などの切り口で作ろうとするため、「いや、そんな事実ないんだけど」というものも出てきます。
以下は、デイトラの過去のリリースについて、Claude3.5 Sonnetで新しい切り口によるアイデアを出させたものです。
- 意外性のある統計や調査結果を強調
- ヘッドライン:「調査衝撃:70%の事業者が”優秀なフリーランス”探しに苦戦 – デイトラが革新的解決策を発表」
- リード文:「株式会社デイトラの最新調査で、7割の事業者がフリーランス人材の選定に課題を抱えていることが判明。この驚きの結果を受け、デイトラは画期的な新サービス「デイトラGALLERY」をリリース。」
- 業界初の取り組みを強調
- ヘッドライン:「業界初!AI×人間審査のハイブリッドシステムでフリーランスの”実力”を可視化 – デイトラGALLERYがリリース」
- 本文に追加:「デイトラGALLERYは、AI技術と人間の専門家による審査を組み合わせた業界初のハイブリッドシステムを導入。これにより、クリエイターの技術力と人間性を高精度で評価し、掲載しています。」
- 社会問題への貢献を強調
- ヘッドライン:「フリーランス×企業のミスマッチ解消へ – デイトラが新プラットフォームで”ギグエコノミー”の課題に挑戦」
- リード文:「急成長するギグエコノミーの課題である”スキルのミスマッチ”。株式会社デイトラは、この社会問題に正面から取り組む新サービス「デイトラGALLERY」をリリース。」
- 未来予測や市場動向分析を含める
- 本文に追加:「デイトラの分析によると、2030年までにフリーランス人材の活用は現在の2倍に拡大すると予測されています。デイトラGALLERYは、この急成長市場におけるマッチング課題を先取りして解決します。」
- 挑戦的な目標設定
- 本文に追加:「デイトラは、デイトラGALLERYを通じて、3年以内にフリーランス×企業間のミスマッチを50%削減する目標を掲げています。この挑戦的な目標達成に向け、継続的なプラットフォームの改善と拡大を進めていきます。」
- 人間ドラマや感動的なストーリーを盛り込む
- コラム追加:「デイトラGALLERY誕生秘話:元システムエンジニアの母親が抱えた悩みから生まれたアイデア」
- 内容:創業者の個人的な経験や、実際のユーザーの成功事例を紹介し、サービスの必要性と効果を印象的に伝える。
- 大胆な挑戦や実験の要素を加える
- 本文に追加:「デイトラは、プラットフォームの信頼性を証明するため、1ヶ月間の”100%返金保証”キャンペーンを実施。この大胆な試みにより、サービスの品質に自信を示すとともに、ユーザーの不安を払拭します。」
- 複数の業界を横断するイノベーションとして紹介
- ヘッドライン:「教育×テクノロジー×人材マッチング – デイトラが次世代型プラットフォーム「デイトラGALLERY」を始動」
- リード文:「株式会社デイトラは、教育、テクノロジー、人材マッチングの3つの領域を融合させた革新的サービス「デイトラGALLERY」をリリース。業界の垣根を越えたイノベーションで、フリーランス市場に新風を巻き起こします。」
「2030年までにフリーランス人材の活用は現在の2倍に拡大すると予測」「元システムエンジニアの母親が抱えた悩みから生まれたアイデア」」など、嘘八百のアイデアも並んでいます。
しかし、「調査衝撃:70%の事業者が”優秀なフリーランス”探しに苦戦 – デイトラが革新的解決策を発表」や「急成長するギグエコノミーの課題である”スキルのミスマッチ”。株式会社デイトラは、この社会問題に正面から取り組む新サービス「デイトラGALLERY」をリリース。」など、使えそうなアイデアもあります。
アイデアなんて結局採用されるのは一つです。
そのため、一つでも使えるものが生まれれば御の字なのです。
今回、切り口はAI自身に考えさせましたが、専門家の知見を別でインプットする手法も有効です。
例えば、井上岳久(2021)『新 プレスリリース道場』では、古くからマスコミ業界で言われているというニュースバリューの6タイプを紹介しています。
- 特異性:今までになく、あっと驚くようなこと
- 人間性:人間味があって感情に訴えること
- 大衆性:多くの人が名前を知っていたり、関心があったりすること
- 社会性:広範囲、あるいは時代的に意義のあること
- 影響性:社会に対して影響を与えること
- 地域性:地域に限定された身近な情報であること
(引用:井上岳久(2021)『新 プレスリリース道場』p.15)
これらを切り口として渡してアイデアを考えさせるのも良いでしょう。
また、この本には具体的なリリース事例とそこに使われているテクニックが豊富に紹介されています。
それらからも参考インプットとして渡せる知見が見つかると思います。
ここで覚えておいてもらいたい大事なことは、「AIに学習させる前提で本を探す・読む」という行為が生成AIを高度に活用するためにとても役立つということです。
本を選ぶ新しい基準に、「AIが持ってない知見を含み、取り込むことによってそのポテンシャルを発揮できるか?」が加わると言ってもよいでしょう。
ぜひ今後の読書に役立ててください。
構造化によってフォーマットの幅を広げよう
既存のプレスリリースを構造化し、それを活用して別なフォーマットでのリリースを作成するよ!
課題1ではこちらか一つのプレスリリースフォーマットを提示しました。
ここでは既存のプレスリリースからその基本構造のみを抽出し、それを土台として独自のリリースを構築する方法を解説します。
構造を抽出し再利用するという手法は、さまざまな分野で長年実践されてきました。
例えば、グラフィックデザイナーがクラシックな広告レイアウトを分析し、その構造を現代的なデジタル広告に応用することがあります。また、小説家や漫画家が新しい作品を考える際に、既存の作品を構造化してそれを元に新しい作品を生み出すことは一般的な手法として行われています。
完全に何もないところから作品を生み出すと「型なし」、つまり基本を生み出さないいい加減なものになってしまいます。
既存の制作物の構造を分析、研究することは創作の基礎的な営みと言えるでしょう。
しかし、構造を抽象化することと、表現を模倣することはまったく別であることには注意が必要です。
一般的に、アイデアや概念、方法論は著作権保護の対象外です。そのため、構造を参考にする分には問題ありません。
けれど、創造性のある「表現」は著作権保護の対象となります。
具体的な表現や、オリジナリティの高いアイデアそのものを真似してしまうと、単なるパクリになってしまいます。それは絶対に避けなければいけません。
また、仮に著作権的にセーフな範囲内であっても、明らかに特定のオリジナリティあるアイデアを模倣すると、倫理的な批判を受ける恐れがあります。現代はSNSによって法律を超えた私刑、炎上が発生する危険性を常にはらんでいるため、この点については気をつけすぎて悪いことはありません。
ここで教える構造を抽象化し、それを元に再構成するというメソッドは応用性が高く非常に強力です。
だからこそ、使用時には「なるべく業界標準的な構造を参考にする」「独自性の高い表現・アイデアを模倣しないようにする」ことに細心の注意を払いましょう。
課題3:PR TIMESにて、サービスリリースに関するプレスリリースを探し、一つ選んでください。ただし、探すときは業界標準的な一般的構造を持っていると思えるリリースを選定します。その後、課題2のプロンプトを実行したのと同じチャットで、以下のプロンプト1→2の順で実行してください。(ChatGPT/Claude/Gemini)※Claude推奨
プロンプト1「以下はあるプレスリリースです。 このプレスリリースの構造を抽象化し、整理してください。 ただし、単なる模倣にならないように抽象化し、原文にある独自性の高い表現は使わないように注意してください。
##プレスリリース
(探したプレスリリースを貼り付け)」
プロンプト2「この構造を用い、最初に提示したプレスリリースを再構成してください」
課題4:今作成したプレスリリースが不十分な内容の場合、以下のプロンプトを実行してください。または、文章をブラッシュアップするために必要なプロンプトを自分で考えて実行してください。(ChatGPT/Claude/Gemini)※Claude推奨
「再作成後のプレスリリースについて、箇条書きはプレスリリースらしい文章にし、説明が不足していると考えられる箇所は説明を丁寧にしてください。」
構造を抽象化→独自の情報を再構成→ブラッシュアップという手法はあらゆる場面で応用が効きます。
DAY6のメルマガや本日の課題1では、こちらでフォーマットを用意してプロンプトに組み込みました。
しかし、一つの型しか知らないと、そこから発展させられません。AIに型自体を聞く手法もありますが、それにも限界があります。
型の幅を広げるという意味で、既存の構造を抽象化するという手法はとても役立ちます。
これもインプットデータを読み込ませるという手法と本質は同じです。
インプットデータが増えれば増えるほど、多様なパターンに対応できるようになります。
一般的な「AI活用」の講座や書籍だと、プロンプトの紹介が主になっています。
「こんなプロンプトが便利です」「議事録の作成にはこのプロンプトを使いましょう」のような紹介を以て生成AI活用だとされています。
しかし、この講座では個別のプロンプトの暗記を推奨していません。
特定の具体的なプロンプトへ依存するということは、一つの型しか使わないことを意味するからです。
大事なのは生成AIのポテンシャルを引き出すための考え方を知ることです。
そうすれば適切なプロンプトを自在に生み出せるようになります。
考え方を身につけ、AIを自由自在に使いこなせるようになりましょう!
ニュースリリースができました!
これで配信します!
これも誤った情報を配信しないように、ファクトチェックと監修者からのチェックを忘れずにね!
まとめ
今回はプレスリリースを作成しました。
DAY6のメルマガと似てはいますが、切り口の広げ方、型の増やし方に違うメソッドを用いています。
ここまで毎日実践してきたあなたは、既にたくさんの武器を手に入れられたでしょう。
明日からはいよいよSEO記事の作成を行ってきます。
初級編も残り3日。
最後まで頑張りましょう!
今回の課題にチャレンジする方は、ぜひXで #AI実践道場 のハッシュタグで投稿してください!
イベント感覚で取り組むことで、モチベーションが上がり仲間もできます。
AI実践道場の最新情報は初芝賢(@hatushiba_ken)にて発信しています。
みなさんの投稿、楽しみにお待ちしてます!